薬局社長名鑑

医療人として気持ちを大切に
楽しい人生を送る
ビックリー株式会社(奈良県)
代表取締役 保井 芳昭
本社:奈良県 出店エリア:奈良県 店舗数:21店舗
設立:1993年 従業員数:210名
穏やかな笑顔で迎えてくださり、物腰の柔らかい雰囲気で取材に応じてくださった保井社長。一緒に同席された人事課長も優しい雰囲気でご対応をしてくださった。穏やかな雰囲気を持っている会社が、勢力的に20店舗以上の薬局を出店されてきた経営の考えやどのような薬剤師像を求めているか聞いてみた。
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独立されるまでは、どのようなご経験をされてきましたか?
製薬会社のMRとして39歳までサラリーマンを経験したのですが、なんとなく考えていたことが、40歳になるまでにサラリーマンを続けていくか、それとも独立やサラリーマンでは無い仕事をしていくかを決めたいと考えていました。MRの仕事は楽しかったのですがこのままでは人生が面白くないと思って会社を辞めました。人生をこのまま終わっていいのかという安易な気持ちでしたね(笑)。実家が街の小さな薬局を経営していたこともあり、手伝いをすることや薬剤師会に顔を出したりなどする中で、医師から保険薬局をやってみないかというお誘いを受けて開局したことが現在に至っています。当時は、この王寺は保険薬局がありませんでしたし、奈良県内でも保険薬局がほとんど無い時代でした。これから必要とされるタイミングだったので良いきっかけとご縁をいただきました。
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当時、薬学部を選択されたのは親の影響でしたか?
まぁ、そういうことになるんでしょうね。大学を選択する時に「何をしたい」「将来こんな風になりたい」などを想像することって、今の学生と違ってあまり無かったですよね。私もその一人でしたね。薬学部に進学して、やりたいことを決めればいいかなぁというくらいです。当時は、薬剤師の資格を活かす仕事は、メーカーに就職するか病院に就職するかの二択のような時代でもあったのですが、薬剤師と関係の無い就職を選択することもできました。今とはかなり環境が違いますね。お恥ずかしい話ですね(笑)。
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保健薬局を経営すると儲けに走ってしまいがちになりますが、その点はどのようにお考えですか?
もちろんのこと、利益が出ないと会社は続けられませんし、雇用を生み出すこともできないので利益は大切です。ただ、利益優先で出店をすることばかりでなく地域貢献をしたいという気持ちが強かったですね。処方せんをもらって薬をもらいにいく場所が無いと患者さんが困ります。患者様のニーズがあり医療機関からニーズがある場所で、地域の皆様のためになるなら出店をしていこうという気持ちで出店を進めていきました。お金儲けを優先に考えるなら、大きな病院の門前に出店することを考えて行動をとっていたと思いますが、私はそこまでする必要は無いと考えました。あくまでも地域の皆様が必要としている場所で地元に足をつけて経営をしていこうという考えでした。
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1番になる気持ちを持っていらっしゃいますが、どのような1番を目指していらっしゃいますか?
全国で1番になることは、見ての通り思っていません。出店をたくさんすることで利益獲得や店舗数での1番を目指しているわけではありません。出店エリアで1番になること、薬剤師・医療人として1番になることを目指すことが大切だと思っています。常に何かの1番を目指し仕事をしていきますし、従業員全員がその気持ちを持って、仕事を続けてくれると良いと考えて、今でもこのことは言い続けています。
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社長の医療人マインドは、薬剤師だから出てくるものでしょうか?
薬剤師の資格を持っているからというわけではないと思います。薬剤師は医療人としての自覚はまだまだ足りないと思っています。医師や看護師は、自分の時間を大切にするよりも患者様が前にいればその人のために時間を費やします。資格を持っていてその仕事をしているからなのかもしれませんが、そもそも困っている人のために、病気や怪我をされている人のためのお役に立ちたいという気持ちがあるからできることだと思います。薬剤師は、その道に進む時の気持ちや思いが資格優先になっているのかもしれませんね。困っている人を助けたい、お役に立ちたいという気持ちが、元々有るのか無いのかだと思います。私は、地域への貢献をしたいという気持ちと、そのニーズがあるところでやっていきたいという気持ちがあるだけだと思います。そのような気持ちがあるから、利益が出にくいと思われる場所での薬局出店も多くしてきました。喜んでいただければそれで良いと思っています。
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地域貢献、地域医療をしていく上で具体的な構想などありますか?
具体的にあれをしたい、これをしたいということを言えることはありません。全てはニーズがあることに対して応えていくことです。保健薬局では、在宅のニーズがあればやってきていますし、介護分野では訪問介護サービスや、居宅介護支援が必要とされたので運営をしています。国の制度もどんどん変わっていきますので、まだまだ私たちが必要とされることはたくさんあると思います。人生最後の看取りも、病院から自宅という流れに変わっていますよね。時代によってニーズも変わっていきます。時代のニーズに合わせて地域貢献をしていきたいと考えています。
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事業を存続していく中で、薬剤師でなければならないと思われていますか?
薬剤師がいなければ薬局は成り立ちません。しかし、これも時代のニーズや流れになると思いますが、非薬剤師ができる業務の範囲も広がりつつあります。そして機械化も進んでいきます。資格が必要な業態ではありますが、薬剤師の資格の殻を破って医療の気持ちを持ち、様々な仕事ができる人となって活躍してもらいたいと思っています。私も元々は薬剤師職ではありませんでしたので、医療に貢献する気持ちを持っていることが必要だと感じています。
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これから先の医療のニーズはどのように変わっていくと思われますか?
在宅・看護関係は、まだまだ増えてくると思っています。これから15年くらいは、確実にニーズが増えます。人口は減少となりますが、薬を服用している方がほとんどですし、70歳前後の方々が多く、まだまだ健康で楽しく生きていかれる時代です。若者の人口減少があるだけですからね。徐々に保健薬局も減少傾向になってきています。その中で、どのようにニーズを捉えて運営していくかということと、薬局閉局や統合については、見守っていかなければならない患者様の迷惑にならないように運営を考えていかなければなりませんね。
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社長の医療人としての思い、仕事に対する思いを従業員の皆さんにはどのように伝えていますか?
以前は、口うるさいと思われるくらいに気持ちを直接伝えていたと思います。今は、次の世代を担う特定の上の者に話をして、その者から伝えてもらえれば良いと思っています。時代が変わり、昔のように愛社精神だとか会社への帰属意識が薄れていっている時代ですからね。言い過ぎると時代はそうじゃないと言われてしまいますし、若い者には若い者の考え方に任せていきたいと思っています。ただ、向上心があり気持ちが伝わる人には、独立支援をしたり、アドバイスをしたりなど直接様々なことを伝えています。あとは、薬局現場に時には入ることもありますし、以前よりも回数は減っていますが、薬局に出向いて皆さんの様子を伺うこともあります。直接顔を合わせて話をすることは大事なことですね。
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次の世代、若手の皆さんのどのような期待をされていますか?
この先は、私たちの世代がつくってきた薬局とは大きく変わってきますし、考え方も大きく違いますので、若い皆さんが楽しく仕事をしてもらえれば良いと思っていますので、自分たちのやり方を考えてやっていってもえれば良いと思います。20代30代のうちは、何にでもチャレンジして自分が本当にやりたいと思うことを探す時間だと思います。40代になる前に楽しいことを見つけて成長してもらいたいですね。楽しいことが見つからないとつまらないと思いますし、仕事も長続きしませんしね。薬剤師として欲や医療人としての欲があれば良いと思いますが、仕事の欲でなくても良いと思います。私も仕事以外の趣味をたくさん持っていますし、仕事に直接関係の無いたくさんの資格を取得もして勉強もしてきました。「何かをやりたい」「こうなりたい」という気持ちがあれば人生楽しく過ごせるものです。当社に何かのご縁で入社される方は、ぜひ欲を持って仕事をしてもらえることを期待しています。