薬局社長名鑑
薬剤師はサービス業。誠意を持って接することで、職場も患者さんも幸せに。
有限会社 参輪(山口県)
代表取締役社長 出上 康宏
本社:山口県 出店エリア:山口県 店舗数:11店舗(うち1店はサービス付き高齢者向け住宅)
設立:1998年 従業員数:60名(2020年10月現在)
働くスタッフが穏やかで明るくあることが、職場にとっても患者様とっても大切と出上社長。経営開始当初の苦労もあわせて伺った。
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まったく畑違いの薬局業界。経営が軌道に乗るまで。
薬局の経営者になるまでの経緯私自身は薬剤師ではなく、もともと旧国鉄(現JR)で35歳まで勤めて、声を掛けられたことがきっかけで5年間病院勤務したのち40歳で独立しました。スーパーに入る薬店のお話を頂いたのがスタートです。親が造船所の3代目でしたが、自分が会社を持つことになるとは正直思わなかったですね。
後々調剤薬局と繋がりを持つというビジョンもその頃はまったく持っておらず、当時は病院も過渡期で、理事長の指示のもと介護保険の講習会、草刈り、車の運転、設備管理まで(笑)、いろんなことを経験させていただきました。キャリアは人との出会いからですね。 -
実際に経営を始めてみた当初は、いかがでしたか?
これが大変でして、悲惨な状況でした(苦笑)。首が回らない状況でまた2店舗目もご紹介を頂きましたが、もう銀行からの融資を受けられなかったので、金融公庫でなんとか事業計画を作り融資を受けることが出来ました。そこから介護事業、デイサービス、医療法人を設立されるところのお手伝いをさせていただいて、ちょっとずつ収支状況が改善していきました。コンサルタント業務らしきことをやっていたのですよ。平成20年にやっと親の借金を返せました。けっこう苦労しました。
取り掛かりとなった薬店は、開業5年後に閉店しました。赤字がずっと続く状況で、ドラッグのチェーン店ができてどんどん追い打ちをかけられまして。田舎ですが、スーパーや薬店が当時どんどんできて、景色もずいぶん変わりました。 -
厳しい薬局経営のスタートだったのですね。
先のことは分からないけれど、頑張っていたらなんとかなる。ただ頑張ってるだけでは……なにかご縁がないと。人を大事にすることが一番大切ですね。私は見返りを求めているわけではありませんが、そうやってコツコツと働いて信用を得ることが大事なのだと感じます。
病院時代にお世話になった理事長には嘘をついて退職、独立しているので引け目がありますが(苦笑)、処方せんを頂いて仕事はさせていただいています。薬局店舗は自分たちで営業して取った店舗はほとんどなく、1店舗を除いてすべて紹介いただきました。
コンサルティング事業も行っており、40施設以上は携わりました。会計のみ会計事務所に依頼していますが、それ以外の労務管理、就業規則、社会保険の手続きも、自社で行っています。 -
たくさんの信頼を得てきた「誠意」と「正義」。
人とパートナーシップを築き、信頼を構築されることを大切にされているのですね。ええ。その一つに、失敗したら早くお詫びをする、ということがあります。何か失敗をしたとき、隠してバレたときに謝るのか、早く頭を下げるのか。何をもって誠意というのか? 自分の中の正義があるかどうかだと思います。正義は人によって違いますし、正義があればすべていいのかというとそういうことでもありませんが。自分を評価するのは自分以外の人なので、自己評価はなんの意味もありません。
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お話させていただきながら”人への想い”がたくさん垣間見えます。
人を育てないと会社は良くなりませんし、人生の1/3は職場で過ごしますから、その職場が面白くないのは最悪ですね。家庭・家族を支えるために自分を含めて家族円満に生活していきたいのは全員共通、そのために働いて対価を得て生活しているわけですから。
この業界は、間違いは厳禁なので、職場はいつも平穏でフラットな状態でなければいけません。その状態を作るためには、空気がピリピリしていてはフラストレーションばかり溜まって良くありません。職場の空気が悪くて間違える、間違いが増えれば叱られる、叱られるとフラストレーションが溜まる……という悪循環になってしまいます。
楽しく平穏な職場環境を整備するのが経営者である私の役割です。ギスギスした職場環境で患者さんにだけは優しく接するなんて、なかなかできないと思います。気持ちの無い言葉は通じないと私は思います。 -
社長が何か意思決定される際も、社員への通達は中間管理職など立てずにフラットに発信されるのですか?
今は後継者育成の意味もあり統括部長を介しています。彼は卸出身で、もともと当社の担当でした。具体的な引き継ぐ年月も、会社の経営状況も、会社の移行の仕方までもう決めています。彼を口説くのに2、3年かかりました。名前も社長向きだなあと思ったり(笑)
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創業者でなければわからない苦労があると思います。事業承継は受ける方も相当の勇気と覚悟が要りますね。
たいそうな話をしているわけではありませんけどね。要は「やるか・やらないか」だと思うので。経営上での必要な知識は要りますが、それはやっていきながら覚えられることもありますし、失敗しないと身をもって解らないですよね。成功したことしかない人は、後戻りできないような失敗をしてしまうので、小さい失敗を重ねていく方が良いと思います。
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スタートはみんな同じ。
現役薬学生に向けて。「こういう人と一緒に仕事をしたい」という人物像があれば教えてください。明るい方が良いですね。我々はサービス提供従事者ですが、その認識を持った薬剤師ってすごく少ないんです。”サービスとは何か?”ということを考えていないので、物事の選択を、過程を除いて”良いか・悪いか”だけで追いかけがちです。そういう人は、伝え方が直線的で冷たいように聞こえてしまうことがあります。
伝えることが上手な人は、基本的に明るい方が多い気がします。「明るさ」というのは、ものの言い方一つ、同じ言葉でもその人が言うと安心できるというようなイメージです。特に薬学部を出たばかりの方は、知識は持っているけれどまだ社会に出てないのでどんな人柄なのかが解らない。それなら、本人が持っている資質を活かすほうが早いです。元気に返事ができれば十分だと思いますよ! 薬剤師免許を持っていれば、みんなスタートは一緒です。主席で免許を取ろうが合格点ギリギリで取ろうが、そこから社会へ出てまた1からスタートです。