薬局社長名鑑
とことん”お客様目線”になって考える。目指すのは地域の人の生涯に寄り添える健康ステーション。
株式会社平成調剤薬局(岐阜県)
(左から)代表取締役:大橋哲也、専務取締役:大橋千加、取締役:武山則行
本社:岐阜県 出店エリア:岐阜県 店舗数:14店舗(他FC4店舗)
創業:平成4年 年商:21億円(直営のみ) 従業員:140名(2019年9月現在)
気を付けなければ通り過ぎてしまうほど、良い意味で薬局には見えない雰囲気に驚かされた。地域に根差す薬局であるために”来店しやすさ”を第一に考えた薬局には、取材当日もひっきりなしにお客さんが来ていた。
とびきり明るく行動力のある専務取締役の大橋千加さんと、寡黙ながらも彼女のアイデアを尊重する代表取締役の大橋哲也さん、お2人を支える懐刀の取締役、武山則之さんの関係性もとても魅力的だ。そんな個性的な3人の経営する薬局についてお話を伺った。
お客様目線で「行ってみよう」と思える、徹底した雰囲気づくり。
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一見薬局とは思えない、おしゃれな施設ですね。
ここは隣に託児所、運動施設(デイサービスなど)、カフェ、2Fにはサ高住がある複合施設です。病気でなくてもいつでも誰でも利用していただける、地域に根差した薬局を見た目からも創るために、緑や木を多くして町全体に融合させました。薬局と薬膳カフェで体の内側から、運動施設で体の外側から健康をサポートする場所です。
またここは、併設する託児所の子供たちとも集える場所でもあります。核家族化が進む中、お年寄りや子供たちにとって、全ての世代の人にとって癒しの場所であってほしいという願いもあります。 -
正直なところ、かなりの費用をかけられていらっしゃるのではと思うのですが……?
もちろん、薬局事業の収益があってできたことです。現在直営店が14店舗ありますが、全店舗で新体制加算を取っています。在宅、地域体制加算……とにかくできることは全部やっています。次は、全店舗で健康サポート薬局の申請を行う予定です。ただ、その他の事業も単体での収益は上がっているので、今後の成長に期待できると考えています。
元々は、まず入りやすい薬局を創ることが目的で薬膳カフェをオープンしました。「かかりつけ薬局」という言葉は業界ではよく使われるようになりましたが、一般の人からは「処方箋がなくて薬局に行っていいの?」というお声をよく耳にします。なので、薬膳カフェで食事をし、帰りに薬局に寄って健康チェックをして気軽に相談ができる薬局を実在させることで、たくさんの人々にこれからの薬局の形を知って欲しかった。それがこの総合事業の始まりです。
個人の適性、職能を尊重する社風と薬局の特徴。
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改めて、薬局を始められたときのことを教えてください。
1店舗目は平成4年に小さな調剤薬局としてスタートしました。そのときの目標は、薬剤師の地位を上げ、世間から認められる職業にすることでした。当時岐阜県ではまだ2社目の調剤薬局で、分業率も1%にも達していませんでした。そんなこともあって店は増え続け、開業依頼も増え続けていきました。分業率も上がり、調剤薬局も増え続け、薬剤師の地位も給与も上昇していきました。
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それから現在の事業形態へなるまでの経緯も、お願いします。
開業3年目くらいから、この分業の形が「本当に患者様のためになっているのか?」という疑問を持つようになりました。なので、患者さんの話をよく聞くよう努めた結果、患者さんに代わり医師へのご相談、OTC販売、薬の配達、夜間の電話対応などを取り入れていきました。
また平成10年には、岐阜で初めての薬局のドライブスルーを開始しました。これも、人に会いたくない精神の患者様や、病気を感染させたくない小児の患者様のお母さんの意見からヒントを得たものです。今思えば、当時から地域に根差して、住民の方から信頼を得ることだけを考えていたのだと思います。それらに点数がつくようになるまでに20年はかかりましたが、調剤報酬改定で戸惑うこともなく、次の事業展開ができました。
2012年に介護施設、訪問介護ステーション、介護支援事業所を開設し、2014年に訪問看護ステーションを開設。2017年に薬膳カフェと本店をリニューアルし、2019年に託児所、運動施設(デイサービス)を開設して、現在の総合型健康館として始動しました。 -
この施設で働く従業員の皆さんについても教えていただけますか。
薬剤師はもちろん、介護士、看護師、理学療法士、ケアマネジャー、保育士、登録販売員、事務員、カフェにはイタリアン、日本料理のシェフ、パティシエまでいます。いろんな部門にいろんな職種の専門スタッフがいるので大変なこともありますが、みんながお互いの職能を尊重し合うことで生まれる、弊社にしかないより良いサービスの提供に努めています。
薬剤師に関しては、いろんな資格を進んで取得する人が多いです。漢方、小児、糖尿など専門の資格を持つ薬剤師も多数在籍しています。資格を取ることは素晴らしいことですが、人によってはそれに時間を割くことが難しい人もいます。育児、介護と仕事の両立を頑張っているなど、その人なりに一生懸命に頑張っていることを尊重しています。
女性社員も多い企業です。ワーク・ライフ・バランスや女性活躍とよく言われていますが、弊社には出産、育児経験の社員がとても多く、以前から支え合う風潮があることと託児所の新設により、100%の復帰率を達成しています。
求める薬剤師像―地域医療の中での薬剤師の存在価値
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どういう人に入社してほしいですか?
薬剤師として、本気で地域医療の担い手になりたいと考える人や、地域の人々の健康を支えていきたいと考える人に来ていただきたいですね。
弊社は、在宅業務に関しては岐阜県下ナンバー1の実績と件数があります。多くの薬剤師が在宅業務に従事していることから、悩んだり困ったりしても助けられる環境があります。初めてでも、どこよりも安心して在宅業務に挑めると思います。
また、多職種が存在していることでどの業種とも日常的に意見交換ができ、連携が行え、共に考える機会を持つことができます。地域包括ケアシステムのような仕組みが自社内で構築されていることで、地域医療における薬剤師の使命を理解するのにとても良い環境だと考えています。さらに、漢方薬やOTC販売にも力を入れ、病気になる前の健康相談や健康セミナー、漢方講座などを通して地域の予防医療にも貢献しています。毎年「ココカラフェスティバル」という地域イベントを薬剤師会や社会福祉会などと協賛して開催しています。毎年400名ほどの地域住民の方が参加され、子供からお年寄りまでが集い、一緒に健康を楽しく考える機会を提供しています。
新卒の方はもちろん、在宅業務に真剣に取り組みたい方、在宅経験の無い方、病院経験のみの方など、地域で薬剤師として活躍したいと考えている方にはお勧めの職場環境が弊社にはあると自負しています。
これから薬剤師を目指す方へ。
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これから薬剤師を目指す学生の方へ、メッセージをお願いします。
薬剤師の10年後、本気で考えていますか? 今までのように”待つ時代”は終わり、自らの働きかけ、コミュニケーションを通じて地域の方々の力になることが求められる時代です。薬剤師としての知識を活かし、多くの経験をし、多くの失敗をしてほしいと思います。実体験こそが皆さんを社会人としても薬剤師としても成長させる一番の近道です。
そして大切にしてほしいのは、皆さんは薬剤師以前に社会人で、社会人以前に一人の”人”だということです。基本的なことですが、人に迷惑をかけない、人の気持ちになって物事を考える、人のために何ができるか―これがどんな現場においても一番大事なことだということを忘れないで、人のためになる薬剤師になってほしいと思います。
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最後に、今後の御社の目標を教えてください。
“人生100歳時代。最後まで健やかに生きていく喜びを。”
全ての世代、全てのシーンで健康のサポートができる企業として、地域の人々が必要としていることをスタッフと一緒に考えて、新しいことに挑戦し続けることが目標です。
もう一つは、弊社の人材一人ひとりが、自身の能力を活かし、誰かのために働く喜びを感じ挑戦していける職場であり続けることです。”必要とされる人材が、必要とされる企業を創る”と、我々は考えています。